はじめてのことだらけの映画撮影に戸惑いながら、監督の「ヨーイ、スタート!」のかけ声を受けて、ダラムサラの町の狭い路地を駈け抜けたり、坂道を登ったり……。
長い休みはおじさんの家で過ごす。中国と闘ったことのある怖いおじさんだ。家に帰り着くと、さっそくおじさんの説教をくらう。「お前は何のためにチベットからインドへ来たのか……。
楽しかったけれど、難しいことも知った夏休み。「なぜお母さんはぼくをチベットから異国へ旅立たせたのか」。ヒマラヤが眺望できる山でひとり回想するオロ。天空ではオロの心を励ますように二羽の鷲が舞っている。
ダラムサラの町に五年ぶりの大雪が降った。監督に誘われて旅に出るオロ。監督の友だちのチベット人ツエワンも一緒だ。インド・ネパール国境を越えた三人はおんぼろバスに乗る。目的地はネパール・ポカラ。
ポカラのタシ・パルケル難民キャンプに到着。監督はオロと10年前につくった映画の主人公モゥモ・チェンガを会わせたかったのだ。この難民キャンプで育ったモゥモの親戚の三姉妹とすぐに親しくなる。
ほんとうの家族といるようなやさしさに包まれ、次第にオロの心の扉が開いていく。三姉妹の前で6歳のときに体験した過酷な記憶に向き合い、ヒマラヤを越える亡命の旅の途中、シガツェという町で起きた出来事を語りはじめる。